<第42回 在宅チーム医療栄養管理研究会>
日 時: 平成19年3月18日(日)14:00〜17:20
場 所: 社会福祉法人浴風会
高齢者認知症介護研究・研修センター3F
内 容:
1.<代表挨拶・事務連絡等>
昨年同様、講演会、発表会も行いながら活動を進めていきましょう。「脱水」を発見できれば「低栄養」は見えてきます。『スリーステップ』を用いた事例を積み重ね、2冊目の本作りも目指しましょう。
2.<講演>
『実践:ユニットケアにおける食事の現場
〜摂食嚥下のマネジメント〜』
社会福祉法人にんじんの会 西恋ヶ窪にんじんホーム
管理栄養士 児山左弓氏
開設して2年という特別養護老人ホーム。5つのユニットに45名が入所。ショートステイ3名、デイサービス35名が定員。
新調理システムを導入した電化厨房が施設の入口にある。食事をメインに考えているため、施設内の一等地に厨房を設置。南欧風にデザインされ中がよく見えるようになっている。盛り付けはそれぞれのユニットで行うため、厨房には食器も食洗機もないため、湿度がなくきれいな環境で働きやすい。
食事の時間や場所は自由。食形態の工夫はもちろん、食器や姿勢なども小さな単位できめ細かなケアをしている。そのためにはパートさんにスポットで入ってもらう、管理栄養士といえども一緒にケアをしていくなど、数字で見れば1人で1.8人のケアをしている。
3.<パネルデェスカッション&意見交換会>
『摂食嚥下を考慮した食事サービスの実際
〜患者さん利用者のニーズと機能を生かす
食事に向かう現場の取り組み〜』
@ 病院での実践 北里研究所病院 内田淳一氏
誤嚥による肺炎や栄養障害を引き起こす危険性がある患者様に、チームで嚥下障害の評価をして、経口摂取にトライしていただき、QOLの向上を目指している。均一な密度、適度な粘度、口腔咽頭を通過する時に変形する食形態に配慮するなど、患者様の状態・病状に合わせて個別対応。
また、すべての患者様に対して食べる楽しみを味わってもらおうと、朝は焼きたてのパンが用意されたり、薬膳料理などの特別メニューも選べるようにしている。
A 病院での実践 国際親善病院 市原幸文氏
栄養士とナースが連携し、週に一度病棟のラウンドを実施。主治医、耳鼻咽喉科の医師、理学療法士などとも連携し、個別対応している。
今回は、多発性脳梗塞+パーキンソン病で数年前から自宅療養していた人が、誤嚥性肺炎を起こし入院。抹消栄養から摂食嚥下訓練を開始し、ソフト食、半量摂取、全量摂取と回復し、療養型病院へ転院していくまでの事例を発表してくれた。
B 施設での実践 特別養護老人ホーム第三南陽園 影山光代氏
アルツハイマー病、脳梗塞、高血圧症、要介護5という100歳の女性。今年に入り、徐々に食事の時間も寝ていることが多なり、食事の量にむらが出てきた。3月に入り食べる意欲もなくなってきており、家族は100歳になるので無理はしたくないという。このままでは水分も足りなくなってしまうが、どーするべきかと問題提起した。
幸兌先生より「必要な水分は摂取した方が元気でいられる。最低限の水分は摂取してもらい、脱水にはさせない。食べる水、飲む水が不足する場合の補液についてはドクターがしっかり考えるべき、特養には医師がいるべきだと思う」と回答してくれた。
C 施設での実践 社会福祉法人弥生会くにたち苑 山本節子氏
くにたち苑はもちろん、社会福祉協議会のデイサービス、国立市の配食サービスへも食事を提供している。全体を通して、およそ6割は咀嚼・嚥下機能に対応した食事が必要。
「ペースト食」に関しては「ソフト食」とし、ドロドロ状態ではなく彩りよく盛り付けられるようになってきた。「高栄養ゼリー食」は市販のものをゼリー状にしているが、体重の増えた人もいる。「キザミ食」に関しては名称も含めて現在、職員間で検討課題となっている。
D 施設での実践 特別養護老人ホーたム愛全園 吉野知子氏
「高齢者ソフト食」といわれるものがどの位置にあたるのか、試食対象者の残渣や体重を調べ、施設の食事と比べてみた。施設の中でも比較的お元気な方、あまり動かない方と二極化していて、ソフト食では満足できない人たちもいる。食材そのものの選択、調理の工夫などで個別対応も必要。個別対応はすればするほど仕事量も増えてくるので、各職種としっかり連携し、食事改善の目的をしっかり持って取り組んでいきたい。
◎意見交換会
これまでも摂食・嚥下機能に関しては見てきたが、栄養ケアマネジメントが入るようになって、「血液データと比べて全体が見られるようになった」「栄養士として他職種へ発言する機会が増えた」「追われながらもやっていくうちに気づくことも多くなった」「これまで以上に他職種とのかかわりが必要になり、食堂までは足を運んでいたがステーションにも足を運ぶようになった」。また、各メーカーから出されている商品と食材との相性など、日々の調理現場の様子も情報交換された。病院と施設を含んだ地域での生活がしっかり連携されていけば、安心して在宅療養が送れるだろう。